2018年度ALLOTMENTトラベルアワード受賞者は、小田原のどかさん
2018年度ALLOTMENTトラベルアワードは、全国の114名の作家の方々からご応募いただき、審査員の眞島竜男氏、橋本梓氏による厳正な審査の結果、小田原のどかさんに受賞が決定いたしました。
小田原のどかさんは宮城県生まれ、東京都在住。2015年筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程修了 芸術学博士号取得。「群馬青年ビエンナーレ2015」群馬県立近代美術館、2017年個展「STATUMANIA 彫像建立癖」ARTZONE(京都)などで作品を発表。「彫刻」の普遍的な意味を考察し、特に戦後日本の彫刻に幾重にも横たわる問題点を論じ、またそれを作品として体現しています。今回のトラベルアワードの応募では、イタリア近代彫刻を代表する彫刻家アルトゥーロ・マルティーニ(Arturo Martini)の生地であり、多くの作品が現存するトレヴィーゾ(Treviso, Italy)を訪れ、作家の原点を探り、自らマルティーニの模刻を制作することを通じて、自身の個人史と日本の彫刻史をなぞり、新たな表現へと結実させようとするとても興味深い内容でした。
2018年度ALLOTMENTトラベルアワード:受賞者:小田原のどか / 東京都
略歴
1985年 宮城県仙台市生、東京都在住。2008年多摩美術大学彫刻学科卒業後、2010年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻を経て、2015年筑波大学大学院博士後期課程修了。芸術学博士(筑波大学)。2009年岡本太郎現代芸術賞入選、2015年群馬青年ビエンナーレ優秀賞など。2011年から版元(トポフィル)を運営。編集主幹を務め、作品集や論集などの刊行に携わる。
主な展覧会
2017 個展「STATUMANIA 彫像建立癖」ARTZONE(京都)
2017「テレポーティング・ランドスケープ」アートギャラリーミヤウチ(広島)
2016「白川昌生・小田原のどか「彫刻の問題」」愛知県立芸術大学サテライトギャラリー(愛知)
2015「群馬青年ビエンナーレ2015」群馬県立近代美術館(群馬)
2015「still moving-かげうつし」元崇仁小学校(京都)
2015「ゲンビどこでも公募2015」旧日本銀行広島支店(広島)
2015「あなたはいま、まさに、ここにいる」akibatamabi21(東京)
2014 個展「小田原のどか作品展《↓》」同志社女子大学mscギャラリー(京都)
2012「signals」art center ongoing(東京)
2012「あなたはいま、まさに、ここにいる」京都芸術センター(京都)
URL:http://www.odawaranodoka.com/works.html
WORKS
総評 – 眞島竜男(まじまたつお)/ アーティスト
「2018年度ALLOTMENTトラベルアワード」の審査は、やりがいがあると同時に、なかなかむずかしいものでした。こうした賞審査に携わるのが初めてだったせいもあるでしょうが、このむずかしさはおおむね「トラベルアワード」自体の性質からくるものだと言えます(審査そのものは、応募数が多いため時間はかかったもののスムーズに進行しました)。「トラベルアワード」の審査対象はすでに完成した作品ではなく、構想中の作品や作品制作のための調査・研究です。また、「トラベルアワード」という名称が示すように、本来的に不確かなものを多く含む「旅」を前提にした「行ってみなければわからない、やってみなければわからない」ような試みが審査の対象になっています。ですからその審査は、まだ最終的なかたちが見えていないものを、その実現に向けて(ひとまず)書かれたプロポーザルから「想像」し、評価の対象として仮設したうえで良し悪しを判断する、という手順を踏むことになります。114名からの応募資料は、言ってしまえばこうした「想像」のための素材であって、審査員には限られた素材から適切に「想像」する能力が求められます。これは、審査員が正しい判断をくだす(のを目指す)ことをいささかも否定しませんが、より大切なのは、一義的な答えに回収されない豊かさ、言葉を換えれば多義性を、過大でも過少でもないかたちで取り出すことでしょう。もちろんこれは、基本的に審査する側の問題です。しかし、審査員が取り出せる多義性(の可能性)は応募資料に全面的に依存しています。応募者と審査員の関係は非対称で、両者のコミュニケーションは互いに一方通行なものにならざるをえませんが、そうした条件のもとでどれだけ豊かに「コラボレート」できるかが、審査と呼ばれるもの一般と同じく、あるいはそれ以上に「トラベルアワード」では重要になってきます。
ですから、応募者からのプロポーザルには内容や意図の明快さだけでなく、こうした「コラボレーション」を触発するような性格も強く求められます。大賞に選ばれた小田原のどか氏のプロポーザルは、企画書としての充実はもちろん、多義性の点でも頭一つ抜き出ていました。プロポーザルというものは、言うまでもなく、それが実現しようとするものを不確かに、そして不透明にしか示しません。小田原氏のプロポーザルではそうした不確かさや不透明さが多義性へと巧みに変換されていて、それがこれから実現されるだろう作品の「質感」(への予感)と重ね合わされることで、応募者と審査員の「コラボレーション」を強く促すように働いていました。これが、同氏を受賞者に選出した大きな理由の一つです。
これまでの「トラベルアワード」の傾向から、いわゆるリサーチ型アートプロジェクトに分類される応募が多いだろうと予想されました。実際、およそ三分の一はこのタイプのもので、質にばらつきはあるものの、こうした作品制作のスタイルが日本でのコンテンポラリー・アートの標準的な手法として定着していることがわかります。小田原氏の、彫刻についての継続的な思考と実践を順当に展開させたプラン――トレヴィーゾ(イタリア)でアルトゥーロ・マルティーニの彫刻を模刻し、石膏像にして日本に持ち帰る――もこうしたリサーチ型の一つと言えますが、ユニークなのはそこに石膏像という具体的な「質感」を持ちこんでいるところです。ここでの石膏像はリサーチから必然的にもたらされる帰結でも、概念としての(特に近代日本の)「彫刻(史)」のストレートな投影でもありません。それはむしろ、そうした確かで透明なものを不確かで不透明なコンディションに導くような「扱いにくいモノ」として想定されています。この点が、小田原氏のプロポーザルと他のリサーチ型との際だった違いでした。この違いは、同氏の過去の作品とのあいだにも認められます。
審査で小田原氏とともに最終選考に残った横野明日香氏のプロポーザル――阿蘇(熊本県)の山をさまざまに体感しながら時間をかけて描く――にも、同じような「質感」に対する積極的な意識が認められました。絵画が、その意味内容だけでなく、それをかたちにするメディウムによっても規定されるのは当然のことですが、横野氏が求める、すでに描かれ(てしまっ)た絵画から遡って見いだされる「質感」としての阿蘇が、豊かな多義性を触発するマトリックスとして想定されていることは強調されるべきでしょう。唐突かつおおざっぱな話になりますが、コンテンポラリー・アートと呼ばれるものは多かれ少なかれコンセプチュアルな性格を持っています。リサーチ型や絵画といった区分は相対的なものであって、どのような作品制作にも程度の差こそあれコンセプチュアルな局面が含まれています。ここでのコンセプチュアル(であること)とは、扱われる主題に固有な「質感」を思考・実践するための技術(の総体)と作品(制作)そのものを重ね合わせ、両者のあいだでのフィードバックを強く促そうとする態度に他なりません。横野氏のプロポーザルには、こうした意味で確かにコンセプチュアルなものでした。
審査では小田原、横野の両氏に及ばなかったものの、新藤冬華氏>のプロポーザル――スミソニアン博物館所蔵のホーレス・ケプロンによるコレクションのレプリカを想像的に制作する――も魅力的でした。しかし、こうしたレプリカ制作にともなう(とされる)キッチュなフェイク感(への趣味)が事前に用意されてしまっているようにも思え、ケプロンのコレクションという「扱いにくいモノ」との遭遇の必要性と、そこに生じるだろう緊張感がやや希薄で受賞にはいたりませんでした。新藤氏の作家性を承知のうえで、より奥行きのある今後の制作を期待します。
ポストコロニアルな主題を扱うプロポーザルが散見されるなかで、井上裕加里氏のプラン――韓国の福祉老人施設「慶州ナザレ園」に暮らす「日本人妻」にインタビューする――は充実したものでした。もっとも、最終的なアウトプットが映像インスタレーションであるのは、それ自体に何ら問題はないものの、他の応募との差別化という点で弱く見えるのは否めません。表現形式の常套を問題にすべきかどうかは慎重な検討を要しますが、私は今回の審査で問題にすべきと判断しました。井上氏と同じくポストコロニアルな主題――マレーシア各地の日本人墓地と「からゆきさん」――を扱った西尾佳織氏のプロポーザルは読み物として非常に力がありましたが、その淀みなさゆえに、現地でのリサーチが文学的なものに解消されてしまうようにも感じられました。これは、プラスティック・アート(造形芸術)とパフォーミング・アート(上演芸術)のエクリチュールの違いの反映にすぎないとも言え、造形芸術家である私自身のバイアスが審査に影響したことを明記しておきます。両氏とも、今回の応募と同様の主題について精力的な制作を続けているので、今後の活動に注目したいと思います。
リサーチ型では、他に松田壯統氏、片貝葉月氏、斉藤幹男氏のプランが目にとまりました。三氏に共通するのは、非実体的なテーマ――喪失への準備(松田)、幸福を生む道具(片貝)、異文化の邂逅と衝突(斉藤)――をアレゴリカルに造形するための契機としてリサーチを捉える姿勢ですが、最終的なアウトプットがこれらの限定的な表象にとどまることも予想され、より包括的な「質感」へのチャレンジが欲しいところでした。
今回の応募で突出して異質だったのが、中田有美氏のプロポーザルです。ピントゥリッキオ作の《受胎告知》(サンタ・マリア・マッジョーレ教会)についての独創的な解釈に基づくもので、中田氏のこれまでの作品とラディカルに切断されている(ように見える)点も含めて評価されましたが、応募時点での(日本国内で行える)調査・研究が不十分に思われ、受賞にはいたりませんでした。こうした過剰に個人的な、あるいは、誤解を恐れずに言えばアクシデンタルな興味・関心を「トラベルアワード」のような賞審査がどのようにサポートできるかは、今後の大きな課題でしょう。自身の作品で使われているメディウムを調査・研究するタイプのプランでは、中山晃子氏と橋本匠氏のプロポーザルが目をひきました。中山氏はトルコの「エブル」(マーブリング描画技法)を、橋本氏はオーストラリアの「チュリンガ」(アボリジニの祭祀物)を、それぞれ現地でリサーチするというもので、両氏にとっての必要性が明確に述べられていました。それ以上のものを強く感じさせなかったとも言えるのですが、実直な姿勢は一定の評価に値します。フランスで磁器を調査するという吉田芙希子氏のプランも同様ですが、こうした具体的なメディウムの調査・研究は、アーティストの作品制作を広く支援する「トラベルアワード」の意図にかなうものでしょう。
他に、これまでの作品制作を発展・展開させようとするプランも多数見られました。そのなかで、藤川琢史(SPACE OPERA)氏と祐源紘史氏のプロポーザルが、新規性で強いアピールはないものの、既存の作品を新しいロケーションに投じることで作品と作者自身(の身体性)の変質を試みようとする点が注目されました。また、ここでは詳しく論じませんが、小栢可愛氏、石井友人氏、濱口綾乃氏、宮原野乃実氏、原田裕規氏、三輪恭子氏、松本美枝子氏のプロポーザルは、「トラベルアワード」からのサポートの有無にかかわらず実現して欲しいと思わせるものでした。
最後になりますが、審査員の橋本梓氏、ALLOTMENTの近藤正勝氏と江坂恵里子氏、審査会場を提供していただいたグランドレベル/mosaki、そして応募者の皆さんに感謝いたします。
総評 – 橋本梓(はしもとあずさ)/ 国立国際美術館主任研究員
前回に引き続き、ALLOTMENTトラベルアワードに審査員の一人として関わる機会を頂戴した。改めて事務局の近藤正勝さん、江坂恵里子さんをはじめとする関係者の皆様にお礼を申し述べたい。この度の審査会場には、mosakiのお二人が立ち上げた株式会社グランドレベルが手がける喫茶ランドリーを提供頂いた。現代版喫茶店を謳ったこの場所の、地に足のついた創造性が、審査中に私を大いに刺激したことを特に記しておきたい。地元に開かれたプラットフォームを作る、と口で言うのは容易いが、結局内輪のサロンやかたちだけのものになってしまうことは珍しくない。しかし審査当日、朝から日暮れまでをここで過ごした私の目に映ったのは、実にさまざまな人たちが自由にこの場所を「使って」楽しむ様子だった。洗濯機もミシンも本もお菓子も手作りの小物も、雑多な印象を与えることなくうまく同居していて、それにもかかわらず空間全体のもつデザインセンスは失われていない。建物の完成を頂点とせず、使われることで有機的に成長していくこの喫茶店のように、翻ってみればこのトラベルアワードも、携わる人が何年もかけてかたち作ってきた。ただ援助金を提供するだけのアワードでないことは、前回の審査を通じてしみじみと感じていたが、改めて身の引き締まる思いで審査を行った。
若くして他界した與語直子の想いを継ごうという関係者たちが立ち上げたこのALLOTMENTも、第一回の募集から数えれば9年という長い月日が経つ。その間に、アーティストもキュレーターもますますグローバルに移動するようになっていると感じる。個人的には今年、奇しくも「トラベラー まだ見ぬ地を踏むために」と題された、勤務先である国立国際美術館の開館40周年を祝う展覧会を共同企画した。未知のものに出会うというような比喩的な意味での旅はもとより、実際に旅をすることで開かれる新たな扉の魅力は、人々を魅了して止まない。ますます多くのアーティストが旅を切実に必要としていることを示すように、前回の倍以上の応募書類が私たちの手元に届いたのだった。
114の旅に出る理由はさまざまで、前回から応募数が大幅に増えただけでなく、プロポーザルの質も全体的にさらに上がった。何度も挑戦して下さる方も少なからずおられて、しかも前回とは違ったアイデアをぶつけてきてくれることを非常に頼もしく思った。今回から応募者の年齢上限を廃止したが、それでも応募者の年齢層は20代後半から30代が中心となった。全体を通して目立ったのが、近現代史を再検討すべく日本国内及び近隣諸国への旅を希望するプロポーザル。また民俗学や宗教学的な観点から調査旅行を計画するプロポーザルだった。前者のキーになるのは主に第二次世界大戦と東日本大震災(及び原発問題)、後者を希望する者は、関心のある説話などを紹介し、各自の作品と概念的に結びつけるものが多かった。旅先でのローカルな人々との「交流」を作品化するプランは随分減って、自らの「調査」の結果を映像や写真など資料の総体で見せる(ことを目標とする)プランが多かった。
その結果というべきか、奇妙なことに、それぞれの行き先や動機は異なるはずなのに、なぜか「似たような」プロポーザルを繰り返し読んでいるような錯覚にしばしば陥った。そのような場合の多くは、歴史や文化史の紹介が表面的で(ウィキペディアが透けて見えるような)、その土地への敬意が感じられず、結果応募者の作家性・作品性も霞んでしまうようだった。作家は歴史家でも人類学者でもないことは百も承知であるが、とはいえたとえばその土地へ調査にお邪魔し、協働を依頼しようというのであれば、最低限の理解と最大限の敬意は不可欠ではないだろうか。一方的にその土地をいわば利用して制作をすることができるような、芸術とはそのような免罪符ではないだろうと私は思う。他方で、たとえ作家の抱くビジョンが大いなるフィクションであったとしても、それが訪れる場所に誠実に向き合った結果導き出されるものであるならば、何物にも代え難い魅力として作品を輝かせる核となるはずだと考える。
審査の最終段階に残ったプロポーザルはいずれもそうした意味の強いアピール力があり悩ましい審査となったが、最終的に審査員の意見が一致して鮮やかな一本勝ちを決めたのが小田原のどかさんである。強い問題意識を持って彫刻(特に公共彫刻)の社会的・制度的な意味を丁寧に検討し続けている彼女のプランは類例のないもので、プロポーザルから感じられる知性と粘り強さに説得力を感じた。それと同時に、このプランが実施された後に何がもたらされ、どのような新たな展開があり得るのか、その予測不能性にも惹かれて強く推させて頂いた。
次点となったのは横野明日香さんである。画家である彼女のプランはある意味で非常に素直なもので、誠実に絵画に取り組み続ける姿勢を綴る、借り物でない彼女自身の言葉が深く響いた。プロポーザルから推測するに画家としての姿勢は極めて内省的でありながらも、自己完結せずに世界との接点を見出そうとする気持ち、それを後押ししたいという思いが最後まで小田原さんと迷わせるものだった。
この二人と競ったのが、鳥公園を主宰する劇作家であり演出家の西尾佳織さんと、平面の仕事から出発して自画像に取り組む中田有美さんである。私は残念ながらその舞台を見たことがないのだが、プロポーザルからは高い志が感じられ、大きなテーマに立ち向かいつつ、立ち現れるハードルに悩みつつも正面から向き合う様子が率直に書かれていた。そのような想いをシェアしてくれたことに感謝したい。今回は残念ながらアロットメントで援助することは叶わないが、同世代のマレーシア作家たちとの協働は、彼女に必ずブレイクスルーをもたらしてくれるのではないかと思う。中田さんはこれまで作品を拝見する機会が何度かあったが、彼女に今回のプロポーザルのような考えが潜んでいるとは思いもよらず、あっと驚かされた。突飛といえば突飛、際どいといえば際どい発想ではあるのだけれども、ぎりぎりのところでそれが作家性に回収されている印象があり、彼女が実際に持論を検証すべくスペッロへ行くことができたなら、どのような結論に至ったのか聞いてみたい。その前にもう少し日本で調査ができそうな気もしないでもないというところが、今回の落選の所以である。
その他に私が大きな期待を寄せた方についてお名前を挙げておきたい。前回の審査でも印象に残った進藤冬華さん、今回のプロポーザルでは彼女がアイヌをテーマにしたお仕事をますます深めていることがわかり、プロポーザルとしてもより成熟していて本当に嬉しく思った。安定して素晴らしい写真を撮る松本美枝子さん、ご縁のあった土地との関わりを丁寧につないでおられる誠実さに彼女らしさを感じた。そして前回も素晴らしいプロポーザルを出して下さった活躍の目覚ましい原田裕規さん、やりたいことというよりもやりたくないこととして記されていた態度表明に私は心から賛同したい。今回のプロポーザルが作品化されたら必ず見に行きたいと思う。また、素朴で美しいアニメーションを作る蓮沼昌宏の沖縄行きのプロポーザルは、作品がすでに目に浮かぶようであった。
他にも、ニュータウンをテーマにプロポーザルを提出して下さった石井友人さん、既に発表されているお仕事からもその実力がよく伺えて、これから楽しみな方だという印象を得た。大阪で既にそうしたテーマで活動している作家もいるので、ぜひリサーチに来て欲しい。巨人伝説のリサーチをベースにした作品に既に5年近く取り組んでいる山本麻記子さん、素晴らしい実績を挙げられており安定感を感じた。30年のプロジェクトとして映画にまつわる物事の周囲を回り続けるSPACE OPERA(11)は特異な集団で、そのコンセプトを含め個人的に好感を持っている。細く長くになるのかもしれないが今後も続けていって欲しいと思う。
今回の審査はアーティストの眞島竜男さんと行なったが、これも私にとって非常に刺激的で楽しい経験だった。眞島さんが普段ご自分の芸術実践のことだけでなく、どれだけ広く深くまた真摯に芸術というものについて考えておられるか、その熱意と見識に触れることができたのも私にとっては得難い経験で、眞島さんにも御礼を申し上げたいと思う。
最後に、ご応募下さった全ての作家の皆様のご活躍をお祈り致します。総じて見てみれば、総評で触れた作家は女性作家が圧倒的に多い。まだまだマッチョなアートワールドの片隅で生きる私としては頼もしい限りである。あのプロポーザルが、あの想いが、こんな作品に化けたのかという予期せぬ嬉しき再会の日を心から楽しみにしている。
2018年度トラベルアワード募集要項
トラベルアワードの目的は、若手美術作家が活動していく中で日常生活と作家活動の両立に伴う様々な問題、または作品を継続して制作していく中での閉塞感といった問題に直面する作家に対して、新たな行動の機会を与え、前進する制作の手助けをすることです。制作旅行とは、作家が新たな作品制作をするために直接的または間接的に興味の有る場所を訪れて滞在し、その土地特有の地理的条件や歴史的背景などから自己の作品制作に必要なソースを抽出することです。
国内の制作旅行を主に、またはアジア圏やアメリカ、ヨーロッパなど、トラベルアワードを使って新たな作品制作に挑む若手作家を下記の内容で募集します。
2018年度トラベルアワード募集要項
応募期間
受付開始:2018年 1月15日(月)
締め切り:2018年 4月30日(月)
対象/応募資格
25歳から上限なし(本年度より年齢の上限はありません。また積極的な作家活動をしている人を対象としているので学生は不可とします)
助成金額
20万円 一名
助成金の使途
受賞後1年以内に制作旅行および作品制作に使用すること。より活発な制作活動をするために自己資金をプラスしてもよい。(制作旅行から帰って6ヶ月以内にリサーチレポートまたは作品を提示する)
受賞者発表
2018年5月27日までにメールで本人に通知します。
また後日5月30日にHPで公式に発表します。
選考審査員
眞島竜男氏 (まじまたつお) |アーティスト
橋本梓氏(はしもとあずさ)|キュレーター (国立国際美術館主任研究員)
申し込み方法
トラベルアワードの応募から受賞者発表までの流れは以下のとおりです。
受付開始
2018年1月15日(月)
申し込み方法
申し込みフォーム1,2をダウンロードして 1. 略歴 2. 制作旅行援助金を使って行きたい場所とその理由に必要事項を記入し 3. 作品画像5枚と一緒にひとつのフォルダに入れて圧縮(Zip)して下記アロットメント事務局のメールアドレス迄送信ください。
info@allotment.jp
提出書類
- 略歴 (PDF申し込みフォーム1 ダウンロード)
- 制作旅行援助金をつかって行きたい場所とその理由 添付2枚以内 (PDF申し込みフォーム2 ダウンロード)、目的地、何故そこに行きたいか、そこへ行って何をしたいか、どんな作品を作ってみたいか、など審査員に分かりやすくまとめて書いてください。
- 作品画像 / 映像
- 作品画像5枚まで添付(最大画像サイズ 各1MBまで)
作品の全体像、またはディテール、インスタレーションの様子など。申し込みフォーム2の下、作品画像詳細1, 2, 3, 4, 5を記入。 - 映像/ビデオ作家に限り必要であれば、映像を5分以内(MP4, MOVに変換/最大ファイルサイズ50MBまで)にまとめて、宅ふぁいる便にて、下記の要領でお送りください。
宅ふぁいる便 http://www.filesend.to/
送り先は、宛先: info@allotment.jp 氏名: アロットメント事務局
また、ファイルを送る時はプレミアム会員登録の上、伝言文にご自分の氏名とEmailアドレスをご記入ください。
(注: ビデオファイルは返却できませんのでご了承ください。また、無断での画像の使用などは有りませんのでご安心ください。)
- 作品画像5枚まで添付(最大画像サイズ 各1MBまで)
受付締切り
2018年4月30日(月)
受賞者発表
2018年5月27日までにメールで本人に通知します。
また後日5月30日にHPで公式に発表します。
2018 Travel Award 審査員
ALLOTMENTトラベルアワードの審査員は、原則2名で行います。また、任期を2年とし、1年ごとに新しい審査員が関わる形とします。また、審査員は、次の審査員を推薦した後、任期を終えることとなります。ALLOTMENTトラベルアワードは、応募していただくアーティストに対して、多様な評価を与えられるようなシステムを継続的に運営していきます。6度目の2018年度は、下記のお二方が審査員です。
眞島竜男(まじまたつお)
アーティスト
1970年東京都生まれ。1993年ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ美術科卒業。近年の主な発表に、「眞島竜男踊ります 2017年衆議院選挙」(blanClass、2017年)、「岸井戯曲を上演する#9 アラカルト」(blanClass、2017年)、「シルバニアファミリービエンナーレ2017」(XYZ Collective、2017年)、「岡山芸術交流2016 開発 Development」(岡山県天神山文化プラザ、2016年)、「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」(京都市美術館、2015年)など。YouTubeで「今日の踊り」を更新中。
橋本梓(はしもとあずさ)
国立国際美術館主任研究員
1978年滋賀県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程指導認定退学。主な企画展に「Flickers: new media art from Japan」(ゲーテ・インスティチュート・ハノイ/国際交流基金、2009年)、「風穴
もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」(国立国際美術館、2011年)、「〈私〉の解体へ:柏原えつとむの場合」(国立国際美術館、2012年)、共同キュレーションによる「Omnilogue: Alternating Currents」(PICA、オーストラリア/国際交流基金、2011年)、「他人の時間」(東京都現代美術館、国立国際美術館、シンガポール美術館、クイーンズランド州立美術館|現代美術館/国際交流基金アジアセンター、2015年)など。
2018年後援者: White Rainbow Limited UK